屋根裏部屋の映写室
ある人は、深夜、黴臭い屋根裏部屋の映写室でプロジェクターの灯りをともす。ある人は、場末の映画館の重い鉄扉を一人で押し開く。
暗闇の中、鈍く立ち上がった光がスクリーンを徐々に強く照らし始める。光線に埃がちらつく。不安定な明滅とともに浮かび上がるのは、走馬灯のような夢ものがたり。
胸踊らせた青春の日々。叶えられなかったスポーツの夢。懐かしい仲間の微笑み。喉を焼いた煙草の苦味。添い遂げられなかった恋人の不確かなぬくもり。伝えられなかった言葉。初めて寝た女の首に巻きつけられた金のネックレスの鈍い光。祖父の眠る病院の静まり返った廊下、冷えたリノリュームの床。野望を暴かれた裏切り者の無惨な亡骸。母を待った小さな駅の待合室。別れた恋人が送った最後の一瞥。
garretの映画には様々な人生の断片が散りばめられている。
目映くもあり、儚くもある。
ここに並べられる作品たちが、寄る辺なき孤独にあえぐたったひとりの魂を照らす、一条の光となることを切に願う。
2023年6月末日
代表 フジオカ ヒロタカ